雲は低く垂れ込め、昨夜の雨の水溜りが『さあ、登るぞ!』の気持ちを消沈させたが、残りの日数も少なくなり今度のモンブランアタックが最後のチャンスと思い直し、何とか頂上に立ちたい気持ちでいっぱいだった。
グーテ小屋までは登ったものの風雪の為、誰一人として頂上へは向かうものはなく、また、粘る時間もなく下山を余儀なくされた。
振り返ると、今までが順調過ぎたのかも知れない。
マッターホルン、アイガー、事故ったもののグランドジョラスの頂には立っている。
しかしまだS君をピークには立たせてやれてない。立たせてやりたいのと、自分も立ちたいのと複雑な気持ちだ。
Hさんの事故後のケガの具合は全く問題無いが、精神的にはやや心配な部分はあった。
『小屋までは行く!』というHさんの決断をメンバーは受け入れた。
普通ならば行かないという人が多いと思うし、自分なら行くと言えないところだが、凄い人だ。
Mさんはグランドジョラスでアイゼンを破損し、スネルスポーツでレンタルし、この場に臨んでいる。
自分の不安材料は、今回何度もはいてきた靴の問題だ。マメの中に更にマメをこさえて靴下の中ではすごいことになっていた。
ここまでひどいのははじめてだ。騙し騙し歩いたが、この足が問題だった。
が、ここまで来たら痛いからといって辞めるわけがない!行くしかない! |