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貞苅店長のヨーロッパアルプス奮闘記 part4
 
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貞苅店長のヨーロッパアルプス奮闘記 part4


アッという間の出来事であった。
音もなく、声を発することもなく、我々が気づかないまま、彼はいなくなってしまった。
『Mさん、Hさんがおらん!』
事態に気づかないMさんに第一報を伝えた。

たまたま、すぐ直前で我々が追い越した、スイスのガイドを連れたドイツ人パーティに事故を伝えると、スイス人ガイドが例のクーロワールをはさんで、別のガイドと大声で話をした。
遠くのガイドは事故を目撃したらしく、すぐにヘリを呼んでくれた。

事故発生 13:30。
ヘリの到着14;06。
速いとは聞いてはいたが、あまりの速さに驚いた。

手を広げてYの字を作りヘリの要請を合図し、下方を指差すと、反転し向かった。
かと思うと、すぐさま反転し、サイドの扉が開き、隊員の一人がワイヤーにぶら下がってHさんが落ちたクレバスに下りていった。
『見つけたんだ!』
というのは、クレバスの中から吊り上げられた二人を見た瞬間、分かった。
ヘリに乗り込もうと、もがくH氏が見えたとき、命は取り留めたと思った。


事故現場1 事故現場2
事故現場1 事故現場2

ヘリはそのまま下界へと向かい、音も聞こえなくなってしまった。
ヘリが去ったあと、ほっとしたのだが、自分もある種のショック状態であのクーロワールを通過するのは危険と思い、すぐ上で様子を見ていたガイド連れに同行を頼んでみたが、断られ、ヘリで下りたほうがいいです、というガイドのアドバイスに、H氏のことも気がかりだし、ガイドにヘリを頼んでもらった。
が、到着まで2時間待ち続けることになった。
何度となく、本当に来るのかを疑った。
例のガイド連れはまだ見える範囲にいた。

ようやくヘリが到着して、ワイヤーで吊り上げられると回転しながら大きなクレバスやさらに下の氷河の氷雪の塊が不規則に割れているのが見えた。
続いてMさんも引き上げられ、ザックやアイゼンなど身につけているものをはずす手伝いを隊員がしてくれ、感激。

すぐにクールメイユールのモンブラントンネル側の警察の施設に降ろされ一人の若い警官にパスポートやインシュランスカードを見せた。
H氏が何処へ運ばれたか?
そこへはどうやって行けばいいのか?
容態はどうか?
など、とにかく心細いであろうH氏の所へ一刻も早く行きたかった。

警官の車でクールメイユールのバスターミナルまで乗せてもらい、観光案内所でボカラッティ小屋のS君に電話で事故を伝え、明日迎えに行くことを伝えることが出来た。
その後、バスでアオスタへ向かった。
食料やお金など大事なものの多くは小屋に置いたままになってはいたが、わずかな現金とパスポートはザックの中に入れておいたのでバス代はギリギリ足りた。

アオスタについてからも病院に着くまで約1時間かかり病院内でさらに30分以上に要し、H氏の病室に入ったのは19時ごろである。
H氏の症状はというと、まぶたの上を5針縫うだけで済んだ。
不幸中の幸いである。
そのまま帰れそうだったが念のため、その日は入院することになった。


下降中の一こま 翌朝の天気のイイコト
下降中の一こま 翌朝の天気のイイコト

我々はいったんクールメイユールに戻り、明日迎えに来ることを伝え、明日朝一番でボカラッティ小屋のS君と装備を降ろす準備の為、バスセンターで一夜を明かした。
寒かったがビバークを思えばこれくらいは・・・。
朝になり、7時20分のバスで小屋に向かう。

バスを降り、さぁ登ろうかという時にいかにもイタリアのご老人という感じのおじいちゃんと仲良くなり、ホテルに朝食や荷物を置かせてもらうのを頼んでくれたりと大変世話になった。
しかもボカラッティ小屋までついてきてくれたのだ。
小屋でS君とやっとのことで再会でき、荷造りをし、下り始めた。

この日、グランドジョラスを目指して出発した全パーティは例のクーロワール手前で引き返し、小屋へ戻ってきていた。
氷の状態が悪く、とても難しいということだった。
我々は昨日、コンディションの良い中を出発できたことに感謝。
小屋から降りると例の老人にまた会い、今度は我々3人をクールメイユールまで送ってくれるように手はずを取ってくれて、またまた感謝。
H氏を迎えにいくため、バスでアオスタに一人で行くM氏を見送り、S君と二人でクールメイユールのバスターミナルで待つこと4時間。
バスで戻ってきたMさんが見えたものの、Hさんの姿はなかった。
『あれー?』H氏はどうやら迎えに行く前に病院からシャモニーへと移動していたとのことだった。
この日はバスがもうないので三人でクールメイユールの宿に泊まる事にした。
H氏のシャモニーでの行き先にはめぼしがついていた。
三人とも、あそこ以外には考えられないと思っていた。
食事付きの宿は久し振りで、宿の方もとても親切でいろいろと、力になってくれた。


ボカラッテ小屋に着いた コルデジョラス
ボカラッテ小屋に着いた コルデジョラス
頂上下の景 モンブランの南側斜面
頂上下の景 モンブランの南側斜面

翌日、モンブラントンネルを抜け、やっとシャモニーの町へ戻れた。
『やっぱり』H氏は思ったとおりの場所にいて、四人が揃うことが出来た。
スネルスポーツの神田さんに事の次第を説明し、『足がちゃんと付いているんだから良かったじゃない?』と励まされ、安堵。
有名なガイドのKさんも横で話を聞いてて笑っておられた。
でも感謝。

シャモニーに戻り、これから先モンブラン周辺は好天が続くらしいと情報を得た。
S君にはまだビッグなピークを踏ませてあげていない。
帰国してからの批判も覚悟しつつ、予定通りにモンブラン登頂に向かうことにした。
落ちたH氏には自己判断で『グーテ小屋までは』という言葉に同意した。
グーテ小屋の予約は取れず、登山電車も土砂崩れでまだ開通してない状態ではあったが、小屋の床、線路脇の歩きを覚悟し、朝一番のバスでシャモニーの町をあとにした。

















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