ヘリはそのまま下界へと向かい、音も聞こえなくなってしまった。
ヘリが去ったあと、ほっとしたのだが、自分もある種のショック状態であのクーロワールを通過するのは危険と思い、すぐ上で様子を見ていたガイド連れに同行を頼んでみたが、断られ、ヘリで下りたほうがいいです、というガイドのアドバイスに、H氏のことも気がかりだし、ガイドにヘリを頼んでもらった。
が、到着まで2時間待ち続けることになった。
何度となく、本当に来るのかを疑った。
例のガイド連れはまだ見える範囲にいた。
ようやくヘリが到着して、ワイヤーで吊り上げられると回転しながら大きなクレバスやさらに下の氷河の氷雪の塊が不規則に割れているのが見えた。
続いてMさんも引き上げられ、ザックやアイゼンなど身につけているものをはずす手伝いを隊員がしてくれ、感激。
すぐにクールメイユールのモンブラントンネル側の警察の施設に降ろされ一人の若い警官にパスポートやインシュランスカードを見せた。
H氏が何処へ運ばれたか?
そこへはどうやって行けばいいのか?
容態はどうか?
など、とにかく心細いであろうH氏の所へ一刻も早く行きたかった。
警官の車でクールメイユールのバスターミナルまで乗せてもらい、観光案内所でボカラッティ小屋のS君に電話で事故を伝え、明日迎えに行くことを伝えることが出来た。
その後、バスでアオスタへ向かった。
食料やお金など大事なものの多くは小屋に置いたままになってはいたが、わずかな現金とパスポートはザックの中に入れておいたのでバス代はギリギリ足りた。
アオスタについてからも病院に着くまで約1時間かかり病院内でさらに30分以上に要し、H氏の病室に入ったのは19時ごろである。
H氏の症状はというと、まぶたの上を5針縫うだけで済んだ。
不幸中の幸いである。
そのまま帰れそうだったが念のため、その日は入院することになった。 |